Memory Contamination Exhibition — Immersive Audio Guide
記憶汚染展 イマーシブ音声ガイド
聴き終えたとき、疑うのは自分の記憶だった。

課題
展覧会の音声ガイドは、展示の背景や物語を伝える手段として長く使われてきた。専用端末を借り、作品の前で番号を押し、解説を聴く。動作としてはそれだけで完結する。
『記憶汚染展』は、マンデラエフェクト——多くの人が同じ誤った記憶を共有する現象——をテーマにした体験型の展覧会である。「記憶はどこまで信じられるのか」を来場者自身に体験させる展示で、鑑賞者は受け身でいられない。
その展示に、受け身の音声ガイドを付けても噛み合わない。出発点は「展示にもっと深く没入できる音声ガイドをつくれないか」という問いだった。
アプローチ
専用端末を配らず、来場者のスマートフォンのWebブラウザだけで完結する設計にした。貸出・回収・充電の運営が発生せず、来場者は自分のイヤホンで自分の端末を使う。
体験は、はじめに顔写真を預かるところから始まる。理由はその時点では明かさない。

声優・梶裕貴さんの語りが、展示に沿って章ごとに進む。作品の前でアルファベットを選んで再生する構成で、全24トラック。字幕を併記し、音を出せない環境でも内容を追える。
最終章の手前で、体験は一度立ち止まる。そこから先は、開始時に預かった顔がAIを使った演出に流れ込み、来場者ごとに違う形で展示のストーリーへ接続していく。
最後に残るのは、その人だけの一枚である。何が起きるかは、会場で体験してほしい。
技術設計
顔写真の扱いを、演出より前に置いた
体験の中で来場者の顔をAIで加工するため、世界観の没入感とリスク管理が正面から衝突する。ここは一貫してリスク管理を優先し、AI利用に関する説明・同意導線・プライバシーポリシーへの案内を、演出が始まる前段に組み込んだ。同意しない選択肢も残し、その場合は顔写真を使わない別ルートへ分岐する。
日英で、同じ体験を成立させる
英語版は日本語版に字幕を付けたものではない。受付から章立て、ナビゲーションまで英語で完結する。英語のナビゲーションは、梶裕貴さんがプロデュースする音声AIキャラクター「梵そよぎ」が担当し、同じ声質で言語だけが切り替わる構造にした。

展示側の表現ルールに合わせる
脚本・演出のトーンは主催の株式会社闇と摺り合わせ、展示側の表現ルールをWeb側にも適用した。数字の表記、章タイトルの字面、警告文の間の取り方まで、展示の中にある文体に寄せている。
成果
東京会場では、音声ガイド付き入場券(3,290円/通常入場券2,300円)として販売した。音声ガイドの利用率は美術館・博物館で約3%が平均的な水準とされており、本ガイドの購入率は その約6倍 を達成した(東京会場の会期全体の集計)。
SNSには会期中、「買った方が100倍楽しめる」「絶対つけた方がいい」と購入を強く勧める声が最も多く寄せられた。次いで「これも作品の一部」「これはもう本編」と、付帯サービスではなく展示体験そのものとして語る声が並んだ。顔写真の登録や終盤の仕掛けに触れながら、ネタバレを避けて勧める投稿も目立った。
主催の『記憶汚染展』公式アカウントも、「ここでしか体験できない“とある仕掛け”も含め、お客様アンケートで大変ご好評いただいております」と投稿している。
今後
no planは、このイマーシブ音声ガイドを、展覧会だけでなく、演劇やライブなどさまざまな公演でも実施していきたいと考えている。既製のシステムに内容を合わせるのではなく、作品の世界観と体験の流れに沿って、一つひとつオーダーメイドで設計・開発する。
チーム
- ディレクション
- 株式会社闇、株式会社TwoGate、no plan株式会社
- 企画・クリエイティブディレクション
- 日野原 良行
- 音声ガイドナビゲーター(日本語版)
- 梶 裕貴
- 音声ガイドナビゲーター・特別演出音声(英語版)
- 音声AI「梵そよぎ」(そよぎフラクタル)
- 技術協力
- イレブンラボジャパン合同会社
Senden-Kaigi specialized copywriting assistance AI
宣伝会議賞特化コピーライティング支援AI
AIにコピーを考えさせるのではなく、人間が自分の手で選び抜くためのAI。

